超低出生体重児における未熟児網膜症:東京都多施設研究
2018.04.15
東京都立大塚病院眼科部長 太刀川貴子先生の原著論文「超低出生体重児における未熟児網膜症:東京都多施設研究」が、日本眼科学会雑誌に掲載されました。当院院長も共著者の一人で、順天堂大学医学部眼科学教室の村上 晶教授、葛飾赤十字産院小児科部長の熊坂 栄先生にもご協力頂きました。太刀川先生初め諸先生にこの場をお借りしてお礼申し上げます。
超低出生体重児における未熟児網膜症:東京都多施設研究
太刀川 貴子1), 武井 正人2), 清田 眞理子3), 齋藤 雄太4), 東 範行5), 仁科 幸子5), 丸子 一朗6), 根岸 貴志7), 野田 英一郎8), 大熊 康弘9), 吉田 圭10), 藤巻 拓郎7)11), 松本 直12)13), 渡邊 恵美子14), 齋藤 誠15)
1)東京都立大塚病院眼科
2)日本赤十字社医療センター眼科
3)東京都立墨東病院眼科
4)昭和大学医学部眼科学講座
5)国立成育医療研究センター眼科
6)東京女子医科大学眼科学教室
7)順天堂大学医学部眼科学教室
8)東京都立小児総合医療センター眼科
9)東京慈恵会医科大学眼科学講座
10)日本大学医学部附属板橋病院眼科
11)葛飾赤十字産院眼科
12)東邦大学医学部眼科学講座
13)愛育病院眼科
14)帝京大学医学部眼科学講座
15)東京都立駒込病院臨床研究支援室
目 的:東京都における超低出生体重(ELBW)児の未熟児網膜症(ROP)の診断,治療状況を調査し,ROPを重症度別に群分けし,それぞれ合併症,神経学的発達について検討する.
対象と方法:2011年に東京都の周産期医療センター14施設で出生したELBW児275例のROP診断,ROPの発症,治療について眼科医に調査を行った.また周産期ネットワークデータベースをもとに生存率,合併症,3歳時の発達検査値(DQ値)について検討した.
結 果:対象の平均在胎週数(平均値±標準偏差)は26.0±2.4週,平均出生体重は722.7±163.7 gであった.生存率は88.7%(244/275),ROP発症率は82.7%,治療率は29.0%であった.1群:治療群でaggressive posterior retinopathy of prematurity(AP-ROP)およびzoneI網膜症20例(8.4%),2群:治療群でzoneII網膜症49例(20.6%),3群:ROP発症なし,および自然治癒169例(71.0%).多変量解析では,治療群(1群,2群)は治療なし群(3群)に比べ,人工換気使用日数60日以上,慢性肺疾患,脳室内出血の割合が有意に高かった.また,3歳DQ値70未満は1群71.4%,2群27.6%,3群17.5%であった.1群は2群に比べその割合が高かった(p=0.009)
結 論:ELBW児の生存率は向上し,ROP発症率,治療率は低下したが,重症ROPの発症率は高く,治療を要した症例の29.0%はAP-ROPおよびzoneI網膜症であった.これらの児は神経発達遅滞の割合が有意に高かった.
日本眼科学会雑誌 122: 103-113,2018
2018.04.15
超低出生体重児における未熟児網膜症:東京都多施設研究
太刀川 貴子1), 武井 正人2), 清田 眞理子3), 齋藤 雄太4), 東 範行5), 仁科 幸子5), 丸子 一朗6), 根岸 貴志7), 野田 英一郎8), 大熊 康弘9), 吉田 圭10), 藤巻 拓郎7)11), 松本 直12)13), 渡邊 恵美子14), 齋藤 誠15)
1)東京都立大塚病院眼科
2)日本赤十字社医療センター眼科
3)東京都立墨東病院眼科
4)昭和大学医学部眼科学講座
5)国立成育医療研究センター眼科
6)東京女子医科大学眼科学教室
7)順天堂大学医学部眼科学教室
8)東京都立小児総合医療センター眼科
9)東京慈恵会医科大学眼科学講座
10)日本大学医学部附属板橋病院眼科
11)葛飾赤十字産院眼科
12)東邦大学医学部眼科学講座
13)愛育病院眼科
14)帝京大学医学部眼科学講座
15)東京都立駒込病院臨床研究支援室
目 的:東京都における超低出生体重(ELBW)児の未熟児網膜症(ROP)の診断,治療状況を調査し,ROPを重症度別に群分けし,それぞれ合併症,神経学的発達について検討する.
対象と方法:2011年に東京都の周産期医療センター14施設で出生したELBW児275例のROP診断,ROPの発症,治療について眼科医に調査を行った.また周産期ネットワークデータベースをもとに生存率,合併症,3歳時の発達検査値(DQ値)について検討した.
結 果:対象の平均在胎週数(平均値±標準偏差)は26.0±2.4週,平均出生体重は722.7±163.7 gであった.生存率は88.7%(244/275),ROP発症率は82.7%,治療率は29.0%であった.1群:治療群でaggressive posterior retinopathy of prematurity(AP-ROP)およびzoneI網膜症20例(8.4%),2群:治療群でzoneII網膜症49例(20.6%),3群:ROP発症なし,および自然治癒169例(71.0%).多変量解析では,治療群(1群,2群)は治療なし群(3群)に比べ,人工換気使用日数60日以上,慢性肺疾患,脳室内出血の割合が有意に高かった.また,3歳DQ値70未満は1群71.4%,2群27.6%,3群17.5%であった.1群は2群に比べその割合が高かった(p=0.009)
結 論:ELBW児の生存率は向上し,ROP発症率,治療率は低下したが,重症ROPの発症率は高く,治療を要した症例の29.0%はAP-ROPおよびzoneI網膜症であった.これらの児は神経発達遅滞の割合が有意に高かった.
日本眼科学会雑誌 122: 103-113,2018